VC PTN 2870485 BlogKenJr. 一+二=三
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作家志望であるかどうかあやしくなってきた作者が、広く世の中に認知してもらうためのあらゆる実験を行うための日記。また作家になるかどうかあやしくなってきた過程を随時報告していきます。
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一+二=三
工藤祥一は生まれつきの難病で、生まれた頃からずっと入院生活をしている。

血液の病気で、今のところ治療法が無く、いつ死んでもおかしくない。

彼の両親は優しく、毎日彼を見舞い、励ましてやる。

企業の社長をする父親は、持てる全ての金をつぎ込んで、祥一の治療に当たらせる。

そんな両親の優しさに触れ、感謝しながらも、まだ見ぬ外の世界に憧れ夢見る祥一。

そしてその夢が叶わぬことを自覚させるように、体を蝕んでいく病。

次第に夢をあきらめ、絶望の淵に祥一は落ちていく。



そんな中、祥一を手術する話が持ち上がる。

かすかな希望を感じ、それに賭けてみようとする祥一。

しかし、手術直前に担当医から聞かされた言葉は耳を疑うものだった。

「祥一君、実は君はある男の子の病気を治すために作られたクローン人間なんだ」

医師の言っている意味がよく解らず、ただ彼を見つめ返す祥一。

「その子は生まれつき心臓に障害があるが、それさえ取り換えてしまえば健康な体になれる。君はその男の子の細胞から作られたクローン人間。君は心臓を彼に与えるためだけに作られたんだ」

そう言って医師は、祥一の寝ているベッドの脇にある小窓のカーテンをめくる。

「見てごらん」

祥一は窓の向こうの手術室に、麻酔で寝ている自分そっくりの男の子を見た。

少しの希望から、絶望の底に叩き落とされ、祥一はそのまま麻酔で意識を失った。





手術は成功し、男の子は無事に健康な体を手に入れた。




医師と話す両親。

「最後は祥一君も納得してくれたと信じたいです」

うつむき加減に話すのは、祥一と最後の言葉を交わした医師だ。

「無理を言ってすいませんでした」

と父親がすまなそうに言う。

「しかし、納得させるためとはいえ、クローン人間だなんて嘘は心苦しかったです」

苦い顔をする医師に父は、

「人として生きるから夢を持ってしまう。どうせ生きられないのなら、せめて自分が生まれてきた意義を感じさせてあげたかった。それで先生には辛い役目をしてもらった。申し訳ない」

と頭をさげる。

そしてなおも、

「でも、結局私達の自己満足かもしれない。私達が自分の気持ちに整理をつけるための」




男の子が目を覚ます。

「おはよう祥二」

「おはよう、パパ、ママ」




男の子は祥一の双子の弟だった。

祥二もまた、生まれつき心臓に難病をかかえ、ずっと入院生活をしていた。

両親は治療法も無く、死を待つしかない祥一をあきらめ、心臓さえ移植すれば助かる祥二を選ぶという苦渋の選択をしたのだった。

無邪気な笑顔を振りまく祥二。

両親はホッとする。

「祥二、もうすぐ退院できるからな」

そういう父親に向かって祥二は急に真剣な顔になって言う。

「パパ、お願いが一つあるんだけど……」

「おお、何だい?遊園地に行きたいか?おいしいものが食べたいか?一つなんて言わないで、好きなだけ言ってごらん。」

喜びで興奮気味に話す父親に向かって、首を横に振る祥二。

「お願いは一つだけ。僕の名前を祥三にかえて欲しいんだ」

祥二の奇妙な願いに、顔をしかめる父親。

「名前を変える?いったいなんだってそんな事して欲しいんだい?」

「僕の心臓は、お兄ちゃんの祥一のなんでしょ?」




両親は驚く。

祥二には祥一の存在を隠していたからだ。

驚きで声も出せずに自分を見つめる両親に祥二は、

「わかるんだ。お兄ちゃんのことが。双子だから」

そして自分の胸をさすりながら、

「それに今は一緒だから」

父と母は、どちらからともなく手を取り合う。

「僕の真ん中に祥一兄ちゃんがいる。だから、二の間に一を入れて三。僕らは二人で一人の祥三なんだよ。これからもずっと一緒なんだ」




両親は祥三を抱きしめた。

親子四人は抱き合って、いつまでも泣いていた。





END






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【2006/05/23 18:49】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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コメント
新作、読ませていただきました♪
残酷?と思いきや、
なんだかラストで切なくなりますね。

短いのにすごく濃い物語を拝読しますと、
この話ってけっこうバックグラウンドがしっかりしているのではないかなぁ、と想像・・・
それをバッサリと短編にしてあるところが、
読者を深みにはめていく仕掛けなのですね!

私は、赤川次郎氏の作品大好きなのですが、
けんさんの筆運びにも、シンプルなのに読者を引き込む独特なテンポがあると思います(えらそう・・・)

可愛い女の子が活躍するサスペンスものなんか、読んでみたいです~
【2006/05/23 20:52】 URL | youxiang #-[ 編集]
ミチルさんへ

ありがとうございます!

僕が短編が好きなのは、実は細かな背景や人物描写が苦手だからなんです。

長編をを書こうと思うと、どうしてもキャラクターの細かい設定を書いたり、台詞の間に人物や風景の描写を入れないといけないじゃないですか。

僕は語彙が貧困なので、そうした描写がワンパターンになってしまうのですよ。

極端に書くと、台詞の後はいつも、

「○○は言った。」

みたいな。

だから、本当はもっと語彙力を」つけて、広がりのある世界を表現できるようになりたいですね。

可愛い女の子のサスペンス考えておきます!

【2006/05/23 22:32】 URL | けん@neo #-[ 編集]
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作家を目指しながらも、日常に追われる日々を過ごす37歳。
名古屋生まれの、名古屋育ち、だが現在は関東在住。
作家に限らず、同じように自分の才能を世の中に送り出したいと考えている方たちと、交流がしたいです。
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